Pfizerのコロナ薬パキロビッドよりも強力なメインプロテアーゼ阻害剤ができた
 ・ 研究リーダーMichael Lin氏のTwitter投稿に関して追記しました。同氏はboceprevirがSARS-CoV-2のMproを阻害することをその開発会社Merck & Coに律儀に知らせましたが、Merck & CoはCOVID-19用にboceprevirを仕立てることをせず、代わりにどうやらPfizerがそれをし、ついにはPaxlovidを手に入れたとLin氏は記しています。
再発膠芽腫のCAR-T治療効果が3試験で認められた
 ・ 関連ニュースを追加しました。
Geronの骨髄異形成症候群(MDS)薬imetelstatをFDA招集専門家一堂が支持
 ・ imetelstatのテロメラーゼ阻害効果について短く追記しました。

Eli Lilly社の非定型抗精神病薬・ジプレキサの高血糖リスクに関して、社内資料と公表データに食い違いが認められた

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2006-12-25 | コメント

臨床試験結果が最初にレビューされたときに社内で配布されていた不利なデータとは一致しないジプレキサ(Zyprexa;オランザピン、Olanzapine)血糖リスクの情報を少なくとも1年間に渡ってドクターに提供していたとNew York TimesがEli Lilly(イーライ・リリー)社内データを引用して2006年12月21日に報じました。

Eli Lilly社の社内資料は、精神疾患患者の代表を務めるアラスカの一弁護士からNew York Timesに提供されました。

以下2006年12月21日のNew York Timesの記事のサマリーです。

Eli Lilly社のトップ科学者に対して2000年2月に送付された社内メモによると、当初は、Eli Lilly社の精神疾患治療薬・Zyprexa服用患者はプラセボ服用患者に比べて高血糖を経験する可能性が3.5倍高いという結果となっていました。

しかしEli Lilly社が少なくとも2001年後半まで医師に実際に提供していたデータは2000年2月の社内メモとは異なるものでした。少なくとも2001年後半まで医師に提供されていたデータは、プラセボ服用患者に比べてジプレキサ服用患者はほんの僅かだけ高血糖を被る可能性が高いことが示唆されています。

また、1999年11月のEli Lilly社の報告によると、70臨床試験の評価から、ジプレキサを1年間服用している患者の16%が66ポンドを超える体重増加を来たしたことが記されています。

Eli Lilly社はこれらの数値を公表せず、代わりに、およそ30%の患者が22ポンドの体重増加を来たしたことを示す少数の臨床試験データにフォーカスしていました。

最初のデータ解釈とその後公表された説明の食い違いに関する質問への回答として、2000年2月の情報は意味をなさず、その後の数値が正しいとEli Lilly社は説明しています。2000年2月以降に臨床試験結果が再評価され、最終的なデータ品質チェックで2000年2月の情報にはエラーが認められたとEli Lilly社は説明しています(清宮注:12月21日のEli Lilly社のプレスリリースにおいて、2000年2月以降に再解析が実施されたとEli Lilly社は説明しています。)。

しかしながら“社外秘(Confidential)”と表記された2000年2月の資料には予備資料であるということは示唆されていませんでした。実際、この資料の脚注には“臨床検査エラーの可能性がある”患者はデータから除外されていることが記されています。

1999年11月の資料には、2000年2月の資料における数値と同一の数値が手書きされている書類も存在します。

Eli Lilly社は、再解析データをFDAと共有していると説明しています。しかし、再解析前の初期データをFDAと共有したかどうかについては言及していません。

2000年2月のメモは、ジプレキサのレーベル変更の可能性を検討するためのEli Lilly社の科学者のミーティングの参考資料として準備されたものでした。

このメモによると、臨床試験においてジプレキサ服用患者において高血糖が認められたことをレーベルに比較的率直に言明するように提案したいとEli Lilly社の科学者は当初思っていました。しかしそのような変更はされませんでした。

ジプレキサはEli Lilly社で群を抜いて最も売れている製品です。2005年の売り上げは42億ドルでした。これはEli Lilly社全体の売り上げの30%を占めています。

2000年2月のメモによると、Eli Lilly社は臨床試験のデータをレビューし、“治療により発生したオランザピン治療群の高血糖(3.6%)はプラセボ群(1.05%)よりも高い”と分かったと記載されています。オランザピンはジプレキサの有効成分です。

しかしその後Eli Lilly社が医師と臨床試験結果を議論した時には、違う比較データが使用されました。


Eli Lilly社は医師に対してジプレキサは3.6%ではなく3.1%の患者に高血糖を引き起こしたと説明しました。そして、プラセボ服用患者の1.05%ではなく2.5%に高血糖が認められたと告げました。この結果、リバイスしたデータにおいては、2つのグループの高血糖の割合はほぼ同一と考えられるレベルになりました(清宮注:Eli Lilly社は、2000年2月以降に実施したデータ品質チェックにおいて解析にどの患者を含めるかでエラーが認められ、その後の再解析でジプレキサで3.1%、プラセボで2.5%が高血糖または糖尿病と思われる症状を発現したという結果になったと12月21日のプレスリリースで解説しています)。

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