Incyte社のPD-1阻害剤が肛門癌治療での居場所を得るのに必要なPh3試験目標達成
 ・ 関連ニュースを正しいものに入れ替えました。
Relmada社のNMDA阻害剤REL-1017(D体メサドン)の大うつ病Ph3試験失敗
 ・ 試験名”RELIANCE III”を追記しました。
Roivant子会社Kinevantの肺サルコイドーシス薬namilumabのPh2試験失敗
 ・ 誤記を訂正しました(被験者割合がプラセボと差がつきませんでした。→被験者割合の比較でプラセボに勝てませんでした)

バイオシミラーの魅力[投稿日]2008-12-12

素人質問で恐縮ですが、最近、新薬大手メーカーがバイオシミラーへ参入・・・という記事をよく目にしますが、そもそも、なぜ彼らはバイオシミラーを魅力に感じるのでしょうか?

また、バイオ医薬の分野でも、低分子と同じような、新薬vs後発薬、という構図が出来上がっていくのでしょうか。あるいは、新薬メーカーは、低分子の二の舞を避けるために、自らバイオシミラーの領域に先んじて出て行く、という戦略でも持っているんでしょうか?
下記は、この質問「バイオシミラーの魅力」に寄せられた回答の一覧です。
  • 抗体医薬なら魅力的
  • 回答者:yoyotaro さん
  • (2008-12-15 18:33)
バイオ医薬品にはいくつかの種類があります。遺伝子組換えペプチド(インシュリンや成長ホルモン)、遺伝子組換えタンパク質(抗体医薬など)、ワクチン類、再生医療用医薬品(細胞移植など)など。

大手製薬企業が魅力を感じるバイオシミラーとは、このうち遺伝子組換えタンパク質(抗体医薬など)に関する医薬品にほぼ限定されると思います。インシュリンのようなアミノ酸は、たとえばインドの製薬会社によって、既に酵母を用いて安価に製造されています。製造原価はせいぜい数千円/gと見積もられます。大量かつ安価に製造しなければならない点で、大きな利益は見込めません。成長ホルモンについては、使用量が少ないのでg当りの単価が高くなり、後述の抗体医薬の実情に似ているところがあります。。

大手にとっての抗体医薬バイオシミラーの魅力
抗体医薬は分子量15万程度で、糖鎖がついており、現状ではチャイニーズハムスター卵巣細胞のような動物細胞を用いて製造されます。実は、「製造・品質管理」の面で誰でも参入できる状況にないのが現状です。
①先発メーカーが製造用生産株(細胞のことを株と呼びます)を他社に譲渡することはあり得ません。生命線だからです。すると後発メーカーは株を自作することになりますが、生産株の最適化にはとりわけ時間がかかり、現状でも1年程度は要しています。先発メーカーの特許失効後に細胞株の選択が始まることになります。
②いざ製造に着手しても、それを医薬品として利用するためには、先発メーカーと同様に非臨床・臨床試験を実施しなくてはなりません。ここが低分子の後発品と大きく違うところです。ICH Q5Eにも規定されています。これらの試験には時間と1,000億円にも上る開発費用がかかることが通常です。
③抗体医薬の場合、1ロット当り〜20kLまでのバイオリアクターで製造し、高価な培地と精製システムを用いて製造されています。1ロット当たり数億円要しています。設備を持たない場合は、製造受託会社(Contract Manufacturing Organization)に委託しますが、さらに製造費用がかさみます。
④ランニングコストがかさむのだから自社で製造しようか、と考えることになりますが、バイオ医薬品の設備の建設・稼動までの費用がとても大きいのです。ISPEという団体が毎年、"Facility of the Year"を表彰しています。昨年は、受託も手がける欧州のB社、バイオでは乗り遅れたと言われ集約化が急ピッチで進む米国のP社、バイオで先端を行くG社を傘下にもつ欧州のR社のドイツの工場が対象となりました。いずれも設計から竣工まで4年程度を要し、治験製造設備でも3億ユーロ以上の費用を工場にかけています。面積当りの単価が400万円/m2と試算され、低分子製造設備の10倍以上をかけています。ビデオで見た限り、ガラス張り、自動化、培養と精製のスケジュールの同期化(同じ期間で製造→洗浄→試験が終わる)など、彼らのポリシーをひしひしと感じる設備でした。


つまり、
・後発品といえど製造に着手するまでに時間がかかり、合成品のような代替製造法は考えにくい。
・先発品と同様の開発費用を要する。
・製造原価が高価である。
・設備建設に踏み切れない。
資金規模で優れる少数のメーカーだけで市場を占有することが期待され、しかもそれなりに売り上げが見込める市場が存在する状況ですから、大手にとっては魅力が多いといえるでしょう。

では、日本の大手はどうするのか?C社を除いて完全に抗体医薬に乗り遅れている状態で、バイオシミラーを決断するだけの度量は小さいと思います。最近抗体医薬に乗り出した日本の大手程度の規模では、①〜④をシステムとして完成させるのも実は困難なのではないでしょうか。
  • 回答に対する質問者のコメント
  • (2008-12-15 18:33)
yoyotaro様

大変丁寧なご回答、ありがとうございました。
参考になりました。

どうもバイオシミラーは、「後発品」というよりは、新薬にかなり近い、「バイオシミラー」という新たなセグメントの製品、と考えたほうが妥当そうですね。
また、おっしゃるとおり、抗体医薬は新薬もバイオシミラーも、一部の資金力のあるメーカーでしか手が出せない、という感じは同感です。「一部の企業にとっては」バイオシミラーが魅力的、というのも納得です。

バイオシミラーに限らず、新薬についても、抗体医薬は製造に関して大きな問題があると以前から思っていました。明らかにこれまでの合成品とは製造過程がまったく違いますよね。
設備やノウハウを持たなければ、Rz社のような受託製造メーカーに頼ることになるのかと思うのですが、日本のほとんどの大手メーカーは立場的に圧倒的に不利と見られ、心配です・・・。

いずれにしても、大変示唆に富んだご回答でした。
誠にありがとうございました。
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