AbbVieの肺癌薬Emrelis(エムレリス)を米国承認
 ・ 取り急ぎの承認である旨短く追記しました。
AstraZenecaの癌治療二重特異性抗体2つが今年Ph3試験に進む〜IL-12薬は脱落
 ・ 誤解を訂正しました(リベゴストミグ→リルベゴストミグ)
プラスチックを食べて増えうる細菌が患者から見つかった
 ・ 変だった表現を訂正しました(CA-UTIとVAPはどちらもプラスチック頼りの装置が使われます。→CA-UTIとVAPはどちらもプラスチック頼りの装置の使用と関連します。)

記憶増強剤・NEO-339の動物試験結果

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2002-07-11 | コメント

2002年7月10日、カリフォルニアに本社を置くバイオベンチャー・Neo Therapeutics社(NEOT)は、開発中の化合物・NEO-339が、動物実験において記憶力や集中力を増強する作用が認められたと発表しました(2002年7月10日プレスリリース)。

NEO-339は「heterocyclic purine類似物質」という成分からできています。これまでの研究からheterocyclic purineには脳の機能を改善する効果がああると分かっていました。NEO-339は、heterocyclic purineから人に毒になる部分を取り除き、効果がある部分だけを残した新しい物質です。

Neo Therapeutics社は、現在NEO-339を他社にライセンス導出する方向で開発を進めています。最終的には、認知障害やattention deficit disordersを治療する薬に育てていく予定です。

Neo Therapeutics社の他の薬
Neo Therapeutics社は神経を成長させる、記憶力を増強する働きがあるとされるNeotrofinという物質をアルツハイマー病、パーキンソン病の治療薬として開発しています。

今年の4月29日のプレスリリースで、アルツハイマー病を対象としたNeotrofinの臨床試験結果が発表されましたが、残念ながらNeotrofinはアルツハイマー病に対する効果を確立できませんでした。このニュースを受けて株価は壊滅的な打撃をうけて、株価は一気に0.1-0.2ドルの間に暴落しました。

そのおよそ1ヶ月後、2002年5月29日には、パーキンソン病を対象にしたNeotrofinの臨床試験成績が発表されました。

この臨床試験では最初にNeotrofinを500mgを数週間服用し、その後1000mg、2000mgと用量を上げていきました。不思議なことに、Neotrofinは最初の500mgでは効果があったのに、その後1000mg、2000mgと用量を上げていくにつれて効果がなくなっていきました。薬は、通常は用量を上げていくほど効果も高くなる筈ですが、Neotrofinではまったく逆に用量を上げていくほど効果がなくなっていったのです。

したがってNeo Therapeutics社は、今後低用量だけで臨床試験をやり直し、本当に低用量なら効果があるかどうかを調べる予定です。

巻き返しに期待
アルツハイマー病を対象としたNeotrofinの臨床試験の失敗により株価は1ドルを大きく割り込んでしまいましたが、NEO-339をはじめとしたNeotrofinに続く新薬で巻き返しを期待したいところです。

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