パキスタンの大道芸人の研究から鎮痛剤の標的として有望なイオンチャンネルが同定された
Free!痛みを感じないという特異な体質を持ち、その特徴を生かしたパフォーマンスを繰り広げてきたパキスタンの若い大道芸人(ストリートパフォーマー)に端を発する研究から、痛覚に必要となる遺伝子が同定されました。この遺伝子をSCN9Aといいます。
この少年は、痛みを感じないことを利用して腕をナイフで切ったり燃えている石炭の上を歩いたりといった大道芸をして観衆を驚かせていました。
この少年の研究をきっかけにして、この少年と同様に他は正常なのに痛みだけを感じない5人の無痛覚者が3つの家族から同定されました。
その後これらの無痛覚者の遺伝子を解析したところ、Nav1.7というナトリウム・チャンネルのαサブユニットをコードする遺伝子・SCN9Aに3つのホモ接合性ナンセンス突然変異(S459X, I767X, W897X)が見つかりました。
実験の結果、この変異はNav1.7の機能を消失させると分かりました。
今回の結果から、SCN9Aは痛覚に必要であり、Nav1.7のαサブユニットは新しい鎮痛薬の標的として有望と考えられました。
この研究にはPfizer社の研究者も関与しています。すでにファイザー社は今回の発見をベースにした化合物の前臨床試験を実施しているとのことです。
2020-07-26|痛み
+ ネアンデルタール人は痛みにより敏感~その原因変異を有する現代人はより痛がり
2020-03-30|痛み
+ 世界の約30人に1人(3551/10万人)が首が痛い〜早期発見と手当ての啓蒙が必要
2020-02-09|痛み
+ プロラクチン抑制で女性の痛みを癒やしうる
2020-01-21|痛み
+ 慢性痛患者の大麻使用の睡眠維持効果は長続きしない〜癌の痛みも治まらない
2019-11-29|痛み
+ より安全な慢性痛治療薬の開発を助けるδオピオイド受容体活性化構造が判明
この記事についてのコメントは、まだ投稿されていません。