【増補版】long COVIDに依存症薬ナルトレキソン低用量が有望
Free!依存症治療薬ナルトレキソン(naltrexone)低用量(LDN)を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(Post COVID-19 Syndrome、PCS)患者52人に試しに2ヵ月分処方したところ調べた7項目のうち6つの改善が認められました。
ナルトレキソンは50 mg投与でオピオイド(アヘン)遮断作用を担いますが、その10分の1未満の1〜4.5 mgの低用量投与は独特の免疫調節活性をどうやら有し、low dose naltrexoneにちなんでLDNと呼ばれ、いつもの用量のナルトレキソンとは区別されています。
LDNに特有の作用はオピオイド成長因子受容体(OGF)遮断、Toll様受容体4炎症経路阻害、マクロファージ/マイクログリアの調節、T/B細胞の阻害などによるらしく、数々の病気への効果が小規模試験や症例報告で示唆
されています。たとえばいつもの治療が不十分な炎症性腸疾患(IBD)患者47人への投与で寛解を促す効果、今では筋痛性脳脊髄炎(ME)/慢性疲労症候群(CFS)と呼ばれる慢性疲労症候群(CFS)の患者3人への投与でその治療効果が示唆されています。また、関節リウマチ(RA)、線維筋痛症、多発性硬化症、疼痛症候群患者へのLDN投与では抗炎症薬が少なくて済むようになりました。
アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(UCD)の感染症専門家John Lambert氏はライム病と関連する痛みや疲労の治療にLDNを使っていたことから、COVID-19罹患後症状へのLDNの使用を同僚に勧めました。するとすこぶる評判が良く、それではということで彼はCOVID-19罹患後症状、俗称long COVIDへのLDNのまずは安全性、さらには効果も調べる試験を計画しました。
試験には52人が参加し、それらのうち38人がLDN服用を始めました。2人は有害事象を生じてLDNを中止し、36人が2か月のLDN服用期間後の問い合わせに回答し、症状や体調の指標7つの変化が検討されました。
結果は有望で、それら7つ中6つ・COVID-19症状、体の不自由さ、活力、痛み、集中、睡眠障害の改善が認められました。気分は改善傾向を示したものの有意レベルではありませんでした。
Lambert氏のライム病患者への使用目的と符合し、LDNは痛みに最も有効でした。今回に限らずLDNの慢性痛緩和効果はこれまでのいくつかの試験でも認められています。
先立つ試験でも示唆されている通りLDNはどうやら安全で、LDN服用中止に至る有害事象を生じたのは2人のみで、被験者の殆ど95%(36/38人)は無事にLDNを服用できたようです。
今回の試験は対照群がないなどの不備があり、示唆された効果が全部LDNの手柄と判断することはできません。Lambert氏はLDNの効果の確かさを調べる大規模試験を計画しています。
Lambert氏の他にもCOVID-19罹患後症状へのLDN の試験があります。米国ミシガン州のサプリメント企業AgelessRx社はCOVID-19罹患後症状患者の疲労の軽減や生活の質の改善を目当てとするLDNとNAD+併用の下調べ試験(pilot study)を実施しています。
医薬品以外のCOVID-19罹患後症状治療の開発も進んでいます。その一つが嗅覚消失を脳刺激装置で治療する取り組みです。
いわずもがな嗅覚消失はCOVID-19の主症状の一つであり、日にち薬で回復することも多いとはいえ一向に回復しないことも少なくありません。嗅覚や味覚の突然の変化を被ったCOVID-19患者およそ千人を調べた試験の最近の結果報告によると、COVID-19診断から少なくとも2年経つ267人のうち嗅覚消失が完全に解消していたのは5人に2人ほど(38%)で、半数超(54%)は部分解消にとどまっており、13人に1人ほど(7.5%)は全く回復していませんでした。
そういった嗅覚消失患者の嗅覚の回復を目指して開発されている人工嗅覚装置は難聴を治療する人工内耳が脳で処理できる電気信号に音を変えるように匂いの信号を脳に移植された信号受信電極に送ります。それが匂い成分毎に異なるパターンで脳の嗅球を刺激して匂いを把握できるようになることを目指します。
販売に向けた協力体制も発足しており、そう遠くない未来、向こう5〜10年に製品の発売が実現するかもしれません。
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