【増補版】かつてのプラセボがいまや米国承認の勃起不全治療製品
Free!英国の製薬会社Futura Medicalが開発した処方不要の勃起不全治療製品Eroxonの店頭販売が米国で承認されました(1)(2)。
かつて同社は同社独自の皮膚透過粘液(ゲル)DermaSysに血管拡張成分として知られるニトログリセリンを混ぜた塗り薬を開発していました。その開発品名はMED2005で、先々週の火曜日9日に承認されたEroxonの中身はあにはからんやMED2005ではなく、なんとその単なる下地にすぎなかったゲルDermaSysのほうです。
ニトログリセリンを含まないDermaSysはFM57という名称の第V相試験でプラセボの役割を担いました。その試験結果は2019年12月に発表され、どういうわけかDermaSysはニトログリセリン入りのMED2005と同様の勃起機能改善効果を示しました。MED2005高用量投与群はもとに比べて23.27%多い被験者が性交のあいだ勃起を保つことができ、DermaSys 投与群のその割合もほぼ同じで23.16%でした(3)。
というわけで残念なことにMED2005のDermaSysを上回る効果は認められませんでした。しかしDermaSys投与群のどの重症度の患者も勃起不全がもとに比べて改善したことにFutura Medical社は勇気づけられ、新たな第V相試験に踏み切ります。
米国FDA了承の計画に沿って実施された新たな第V相試験でDermaSysは幸いにもFutura Medicalの期待に見事に応え、勃起不全の有意な改善をもたらしました(4)。
被験者数96人の同試験で対照薬として使われた飲み薬(タダラフィル錠剤)に比べて効果の発現は早く、今やEroxon という商品名を冠するDermaSysは塗ってから10分とかからず勃起を感じ取れるようになることが示されました。
その試験の成功を受け、もはやニトログリセリンを含まないEroxonは医薬品ではなく事前の約束通り医療機器の扱いで承認されました。主な成分は水とエタノール(アルコール)であり、処方不要で店頭で購入できます。使えるのは勃起不全を患う22歳以上の成人男性です。
Eroxonを塗った部分はその揮発性成分(エタノールと水)の蒸発によって冷え、続いてゆっくりと温まります。その冷温反応が亀頭の神経末端を刺激することでペニスを膨らませ、性交に必要な固さの勃起を達成して維持できるようにします(2)(5)。
米国でシアリスやバイアグラなどの経口薬(PDE5阻害剤)は医師の処方が必要で、たいていは事に及ぶ少なくとも30分前に服用する必要があります。一方、Eroxonは塗ってから10分以内に勃起することを目指します。
Eroxonは米国に先立って欧州全域ですでに承認されており、ベルギーと英国で販売されています。
Eroxonのホームページによると同剤使用者の約65%が勃起を維持して性交をやりおおせることができます(6)。
英国での1回分チューブ4本入りの値段は24.99ポンドほど(31ドルほど)です(7)。
参考
(1) US FDA Grants for Over-the-Counter Marketing Authorization to Futura for Fast-Acting Topical Gel, MED3000, to Treat Erectile Dysfunction. BusinessWire
(2) FDA Roundup: June 13, 2023. PRNewswire
(3) Futura Announces Top-Line Results from MED2005 Phase 3 study in Erectile Dysfunction. GlobeNewswire
(4) Highly positive FM71 Phase 3 study results with all primary and secondary endpoints achieved, MED3000 remains on track to submit for FDA marketing authorization. BusinessWire
(5) Eroxon Product Leaflet
(6) Eroxonのウェブサイト
(7) First-of-its-kind erectile dysfunction gel gets FDA’s OK for over-the-counter marketing, company says. CNN
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