1型糖尿病の合併症を30年にわたって追跡調査。診断年に応じて発現率が低下している合併症と変化していない合併症がある
Free!ヨーロッパでは、1型糖尿病患者における明白な腎症、増殖性網膜症、死亡の割合が低下していることが最近報告されています。しかしながら、ヨーロッパでのこのような知見に対応するデータはアメリカでは得られていませんでした。そこで、Pittsburgh Epidemiology of Childhood-Onset Diabetes Complications Studyの試験データを解析して、ヨーロッパでの傾向がアメリカでも認められるかどうかが調べられました。
この解析結果が2006年5月のDiabetes誌に発表されています。
この解析ではまず、試験に参加する1型糖尿病患者を診断時期に応じて5つのコホート(1950-1959年に発病、1960-1964年に発病、1965-1969年に発病、1970-1974年に発病、1975-1980年に発病)に分類しました。
そして、それぞれのコホートが20年、25年、30年を経過した時点での死亡、腎不全、冠疾患の発現率を比較しました。また、患者の一部で腎症、増殖性網膜症、神経障害の発現率を20年、25年経過時に評価しました。
この結果、死亡、腎不全、神経障害の発現率は、1型糖尿病の診断が遅かった人の方がより低くなる傾向が認められました。特に、診断から25年経過時点での死亡率は、1950年代に1型糖尿病と診断された人の方が、1970年代に1型糖尿病と診断された人よりも4倍高くなっていました。
診断から20年時点での増殖性網膜症と明白な腎症は、診断が遅かった方が発現率が低い傾向が認められましたが、診断から25年時点ではこの傾向は消失しました。
冠疾患の発現については、診断が遅かった方が発現率が低いという傾向は認められませんでした。
以上より、1型糖尿病の特定の合併症(死亡、腎不全、神経障害)は過去30年間で低下したが、冠疾患、腎症、増殖性網膜症については好ましい変化は認められなかったと分かりました。
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