時間経過に依存した扁桃体ERKシグナル伝達の反応性上昇がコカインの禁断症状を醸成している
Free!光などの何らかのヒントと共にコカインを注射してコカイン依存にしたラットは、コカイン投与をやめると、やめた時点からの時間に比例して「これからコカインを上げるよ」というヒントに反応したコカイン要求行動が増加します。
このたび、投与中止から時間がたてばたつほどコカインを要求する行動が強くなるのは扁桃体のextracellular signal−regulated kinase (ERK) というキナーゼと関連があると分かりました。
コカイン投与中止から30日目の方が、コカイン投与中止1日目よりもヒントに対するコカイン要求行動が強くなります。ヒントを与えると、投与中止30日後では扁桃体でのERKのリン酸化が促進されるのに対し、投与中止1日目ではERKのリン酸化上昇は認められませんでした。
また、扁桃体でのERKのリン酸化を防ぐとヒントによるコカイン要求行動が抑制されました。逆にERKのリン酸化を促進すると投与中止1日目でもコカイン要求行動が強くなりました。
この結果から、「コカインをあげるよ」というヒントに対する時間経過に依存した扁桃体ERKシグナル伝達の反応性上昇が、禁断症状出現を醸成していると考えられました。

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Central amygdala ERK signaling pathway is critical to incubation of cocaine craving. Nature Neuroscience. doi:10.1038/nn1383
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