インド洋諸島で大流行している感染症・チクングンヤの病原ウイルスの遺伝子解析
Free!蚊が媒介する感染症・チクングンヤ(Chikungunya)がインド洋諸島で流行しています。マダガスカル島の東に位置するフランス領のレユニオンでは、全人口(777,000人)のおよそ1/3(258,000人)がチクングンヤを引き起こすアルファウィルス(Alphavirus)に感染しています。主な症状は衰弱するほどの強度な関節痛です。大部分の患者は回復しますが、重症化するケースも多くなっており、これまでに219人の死亡が報告されています。
2006年5月23日のPLoS Med誌に、レユニオン、セイシェル、モーリシャス、マダガスカル、メイヨット諸島の127人の患者由来の糖タンパク質・E1の部分配列と6種類のアルファウイルスのゲノム配列を解析した結果が報告されています。
この遺伝子解析の結果から、チクングンヤの流行は東アフリカのウイルス株を起源として進化していったと考えられました。
特筆すべき分子変化として、非構造タンパク質中に10個のアミノ酸変化が検出されました。このうちの4つのアミノ酸変化はnsP2とnsP4中のアルファウイルス保存領域に認められました。nsP2には、ヘリカーゼ、プロテアーゼ、RNAトリフォスファターゼ活性があり、nsP4はポリメラーゼです。
脳脊髄液からの単離ウイルスには、nsP1, nsP2, nsP3領域ににそれぞれT301I、Y642N、E460欠損という変異が認められました。これらの変異は、血清からの単離ウイルスには認められませんでした。
構造タンパク質領域においては、糖タンパク質・E1に2つの特筆すべき変異・A226VとD284Eが認められました。相同3Dモデリングから、これら2つの変異は膜融合とビリオン構築にとって重要な領域に位置していると分かりました。
E1でのA226V変異は初期のウイルス株には存在していませんが、その後レユニオンで同定されたウイルスの90%以上に認められました。おそらく、このウイルスを媒介する蚊への適応という進化過程においてこの変異を獲得したと考えられました。
アルファウイルスは黄熱病を媒介する蚊(Aedes aegypti)によって媒介されていましたが、今回の遺伝子解析の結果からAedes albopictusという蚊によっても媒介されると考えられました。
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