クローン病を対象にしたalicaforsenのヨーロッパでの第3相試験開始
Free!2002年6月25日、アメリカ カリフォルニア州Carlsbadに本社を置くバイオベンチャー・Isis Pharmaceuticals社(ISIS)は、クローン病の治療薬として開発しているアンチセンス製剤・alicaforsen(ISIS 2302)の第3相試験をヨーロッパで開始すると発表しました。
◇クローン病とは?
クローン病は、自己免疫疾患の一つと考えられています。自己免疫疾患とは、免疫細胞が自分の組織や器官を攻撃してしまうことが原因で起きる病気です。クローン病では、自分の免疫が自分の小腸や大腸を攻撃してしまい、小腸や大腸が炎症をおこしてしまいます。
◇クローン病に関る物質ICAM-1
クローン病に関る物質としてIntercellular Adhesion Molecule-1(ICAM-1)というものが知られています。ICAM-1は、細胞同士の接着や免疫細胞の活性化に関る物質です。クローン病の原因の一つは、この物質が過剰に活性化してしまうことであるとされています。
alicaforsenはICAM-1タンパク質のmRNAに結合してICAM-1タンパク質の合成を防ぎ、ICAM-1の活性を正常化するアンチセンス製剤(*)です。
◇一度は死にかけたalicaforsen
既にアメリカでは去年の11月からalicaforsenの第3相試験が始まっています。アメリカ・ヨーロッパでともに第3相試験が始まって、一見順調そうに見えるalicaforsenの臨床試験ですが、開発が順調に進んでいれば今頃は発売されている筈でした。alicaforsenは一度は死にかけた薬なのです。
一度目の第3相試験は1999年に既に終了しましたが、この試験の結果からでは「alicaforsenにクローン病を治療する効果がある」と結論できなかったのです(1999年12月15日プレスリリース)。
しかし慎重に試験結果を眺めてみると、alicaforsenが高用量の場合に限っては、クローン病を確かに治療していることにISIS社の研究者達は気付きました。そこで、彼等は高用量のalicaforsenを用いて第3相試験をやり直すことにしたのです。そのやり直し試験が、上述した去年(2002年)11月から始まったアメリカでの試験であり、今回のヨーロッパで開始される試験です。
意見のわかれるところだと思いますが、可能性があるならやってみようというこの会社の「しぶとさ」は大変魅力的です。また、こういうしぶとさをもったバイオベンチャーが最終的には生き残っていくのではないかとも感じています。今度こそ良い結果がでることを期待したいと思います。□□□
*アンチセンス製剤 : 病気の原因となるタンパク質のmRNAに結合してそのタンパク質の合成を防ぐ物質。例えばalicaforsenはICAM-1タンパク質のmRNAに結合してICAM-1の生成を防ぎます。今日紹介したISIS社は、alicaforsen以外にも数多くのアンチセンス製剤を開発しています。
2019-11-15|クローン病
+ マクロファージ内で休むクローン病関連大腸菌に抗生剤が平気な面々が集う
2019-03-31|クローン病
+ バイオシミラーCT-P13のクローン病治療がinfliximabに劣らないことをPh3で確認
2018-01-16|クローン病
+ LRRK2遺伝子変異2種がパーキンソン病との関連と同じ方向性でクローン病と関連
2017-11-21|クローン病
+ 腸内細菌のウレアーゼの炎症性腸疾患への寄与が示唆された
2017-11-06|クローン病
+ 腸炎症指標も加味した抗TNF薬治療強度引き上げでクローン病治癒率がより改善
この記事についてのコメントは、まだ投稿されていません。